縄文の人々、紫式部、徳川家康たちは、何を食べていたのだろうか―「物を食べる、という日常的な行為こそ、生活の基本であり、文化の出発点である」と考える学者が、食べることを中心にすえてくりひろげる日本史ものがたり。豊富な知識と大胆な推理に支えられた発想は自由にはばたく。
1976年に出版された単行本が1996年に文庫本となり、その間で筆者の主張・解釈が適切では無くなっている箇所があるそうですけれれど、手直しはしていないのだそう。 これは貴重。 当時の世相みたいなものが汲み取れそうで。 「食べる日本史」とのタイトルだけど、当然昨今の(当時の、ですけど)事についても触れていようでしょうから。
それにしてもウンチクたっぷりの内容で非常に興味深い。 箸の語源なんて、全然知らなくて、一寸したショックだったりして。
そのままの内容だったら評価も相当変わると思うんですが、何故かこの本、帰結するところでいきなりベクトルが変わっちゃってマイワールドに突入するきらいがあります。 単にウンチク本であれば済まされるのに、そこに著者自身の帰結が備わり、その帰結っていうのが唐突に全体の流れを分断するだけではなく、内容も少々信じられないような(こじつけともとれる)感じなので、章の最後は読み辛くなってしまって。
これを「大胆な推理」として発想は自由に羽ばたく...としてしまった朝日文庫も、それこそ「大胆」だと思います。 が、それこそどういう本なの?、みたいな読了後の不信感を煽らせる結果となってしまっていてとても残念だし、読む前だったらそれこそ看板に偽りアリじゃないですかぁ。
ということで、ウンチク本としてはいいけど、本来の体裁がそうじゃないので残念な本なんではありました。