海と毒薬

太平洋戦争末期に行われた日本軍の米兵捕虜生体解剖実験をモチーフに記された遠藤周作の同名小説を、社会派・熊井啓監督が映画化した問題作。 
人道を無視した残酷な実験に参加する青年医師・戸田(渡辺謙)は良心の呵責(かしゃく)にさいなまれる。一方、彼とは反対の姿勢をとりつつも、自分に人間的感情が欠如しているのではと悩む同胞の勝呂(奥田瑛二)。ふたりの眼をとおしてドラマは進められていく。 
本物の血を使って撮影されたというリアルな実験シーンの数々は、モノクロ映像によって逆に陰鬱とした空気が濃密となり、暗黒の時代ならではの背徳の行為をより鮮烈に具現化している。

こないだ...ってどのくらい前だったっけ、去年末だったっけ、ETVで熊井啓監督が特集されていたのを見て、あぁ海と毒薬くらいは観ておかないとなぁと思いながら冬が終わり春が過ぎて夏も夏、そしてなんたる偶然か敗戦記念日の今日さっき、観ました。

んで上のアマゾンでのレビューなんだけど、人間的感情が欠如しているのではと(悩んでいるかどうかはさておいて)いうのは戸田であって、というか「良心の呵責にさいなまれて」いるのが勝呂なんじゃないかと感じたんだけど、真逆じゃん...って事で、なんか自分の自信が喪失しつつあるので暑い事もありまして、書くのもめんどくなってくる。 でも、正直書けば非人道な実験に対して「良心の呵責が苛まれよう」と、「人間的感情が欠如してると悩」もうと、ここで2人の人間を登場させて対比させるまでのものだったのだろうか、という感じで観ていたんで、どっちがどっちでもいいんですよね。 逆に1人の人間にアンビバレンツを発露させた方がいっそのこと興味深いじゃんって思いながら観ちゃったからダメなんだろうなぁ、きっと。 って、まるっきり原作無視な事書いてゴメン。

映画自体はモノクロで、フィルムの感度が悪くない(っていうか案外にパキパキ)なんで、変にリアル。 向こうの世界にまで到達してしまった吉田喜重とまではいきませんけども、良い感じの映像。 当時(戦争が終わる頃)の医療機器や環境を再現したとあり、生々しく、だけど無感情にさらさらと流れゆく床面の水と相まって奇妙であり閉鎖的、そして非人道的なやりとりが展開され、一種不条理の感も見出せます。