精選した「伝単」約230枚(図版点数約380点)を時系列・戦線別で構成し、1点1点には歴史学者の詳細な解説・訳文を付けた、学習教材としても使える初めてのオールカラー伝単図鑑。
図録っていうのは高価なもんだがこれも多分に漏れずの感ありで、一体どういう人が買うんだろう...関係者はそうだろうけど、戦争マニアさん?伝単マニア?...と思いつつ最初から読んだのですけれども、これ、逆から読むのも戦後生まれとしては「アリ」なのかも。 あ、戦後生まれって事にしておいてください<私
それはともあれ満州事変の伝単で「日本軍は公明・仁愛・勇断を信条とすつものとして・・・宣伝を用いざるも・・・」という反アド的潔さを(伝単というか、このばあいは布告)明らかにしているも、すぐに普通に普通の使い方で伝単を使いまくっちゃってる(利用しまくりやがってる)なんていう豹変ぶりなのがすごい。
伝単の使い方はやはりアメリカ(連合軍)の方が効果的なのではないかと思いました(そうそう、あの「運賀無蔵」も収録されています!)が、その分逆に日本軍のそれの内容がどうしようもなく破滅に近づく雰囲気を醸し出しているのに気付かされます。 いや、それは単に日本が戦争に負けたという事実を踏まえている現在に見ているから故なのかもしれないけれども。
敗戦後に連合軍から出された伝単が、最初は「降伏」だったのに段々と「休戦」と変わっていく。 それだけ敗戦を認めず降伏に従わなかった日本兵の多さを物語ると本書では記されておりまして、戦中の伝単と戦後の伝単とは、似ていて全く異質のものであると露呈されます。
考えてみれば情報戦のはしり。 現代ではどう利用されているんだろう。 極限の戦地という状況では、逆に「紙の爆弾」も効果が高そうです。 でも願わくば、使われないに越したことはないと思うところ。