堪忍箱

蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかる…。決して中を見てはいけないというその黒い文箱には、喪の花・木蓮の細工が施してあった―。物言わぬ箱が、しだいに人々の心をざわめかせ、呑み込んでいく表題作。なさぬ仲の親と子が互いに秘密を抱えながらも、寄り添い、いたわり合う「お墓の下まで」。名もなき人たちの日常にひそむ一瞬の闇。人生の苦さが沁みる時代小説八篇。

さらっとした感触ながら、よくよく読むととんでもなく残酷で後を引く表題作他7篇。 所謂「宮部みゆき色」っていうのは無くて、本当に作品毎に幅の広い展開があり、読んでて引き込まれます。

ただこの文庫本に共通するのは、意図的になのかなんなのか余韻を残すという事。 その余韻の残し方、余韻そのものが案外に長いというものであります。