十四歳の銀次は木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがることになる。やがて店の跡取り藤一郎に縁談が起こり、話は順調にまとまりそうになるのだが、なんと女中のおはるのお腹に藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と藤一郎に近づかないようにと店を出されることに…。しばらくして、銀次は藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、おはるがいるはずの家で銀次が見たものは…。(「居眠り心中」)月夜の晩の本当に恐い江戸ふしぎ噺・九編。
奇談つったって今のように情報化されていない江戸時代を舞台にしているので、怖いものったら怖すぎた事だろうなぁ...と思いつつ読み進めると、不思議を軽く通り越して薄ら寒くなる程。
最後に収録された「蜆塚」のように救いようのない気分に落とされるのも醍醐味の一つでありますが、実際本当に救いようのない程暗鬱な訳ではなく、途中で結末が判明し、その判明した結末を再確認するように読み進められるので、あぁ良かった思った通りだ、という読む方の勝手な満足が暗鬱さを吹き飛ばすところに、妙な「救われ感」を満たせるんです。