田園に死す

演劇実験室「天井桟敷」の主催者で、映画作家でもある寺山修司の代表作が低価格で再登場。土俗的な原体験から逃げ出そうとするも叶わず、改変しようとして失敗し続ける主人公の痛恨の思いを、現実と虚構の二重構造で描き出した傑作。

時たまみてしまうのが寺山修司作品なんですけれども、印象っていうのは映画そのものよりも自分または自分を取り巻く環境によって異なるもんだと改めて感じたところ。 こと私に至っては父親になりまして、人の親になりまして、んでいざ見てみましたら、なんか泣いてしまったという。

ただ、主人公がどうのこうのっていうのはあんまりなくて、新高恵子とか三上寛あたりに強烈なインパクトを再投下される形。

三上寛については今までちゃんと台詞を聞いていなかったようで、改めて聞くと最後のアジテーションが妙に「青春」でありました。 あれは生きているうちに誰しも一度は耳にしなければならない。

それにしても強力だったのは新高恵子で、例の有名なシーン「川上から雛壇」はご他聞に漏れず私も最初は大爆笑してしまったものですけれども、ちゃんとシーンの最初から見続けていると、爆笑の前にとても感傷的になっている自分に気付きます。 あそこで絶叫するのはアドリブだったそうなのですが、違和感なく馴染んでいるんですね。 んで直後に雛壇なんで、全部吹き飛んでしまう、という流れだったのではないでしょうか。

うちのせがれも見るようになるんだろうか。 見たらどんな感想を述べるのだろう。 きっと雛壇のところはアレだと思うけど。