やんちゃ坊主のひねくれ坊主…そんな半ズボンの頃の播磨屋御曹司を、「ばあや」はいつも傍にいて、肉親同様に厳しく懐深く育ててくれた。本書は二代目襲名 までの思い出を、「ばあや」へのレクイエムとして綴った半生の記であり、また、初詣に始まる吉右衛門家一年間の生活模様、「鬼平」や演目を通じての歴史へ の思いを人情味豊かに物語る。ふだん着のままの歌舞伎役者が著した処女エッセイ集。
中村吉右衛門というと我が家では、いや実家でも「鬼平」になるのでありまして、逆に鬼平と言えば吉右衛門とイコールになってしまう程ですから、鬼平以外の吉右衛門っていうのは今ひとつピンとこず・・・というのが結構長かったものです。
というのも、テレビドラマでみる吉右衛門は、鬼平以外は・・・こう・・・あんまり面白くないっていうか、見ていて飽きてしまうんですよね。 あれ、なんでなんだろう。
そんな気持ちでいたところ、去年の正月だったかに教育テレビだかで本職のをやってたんです。 お題は忘れちゃったけど。 それがすごく面白くて、あーやっぱり歌舞伎役者なんだなぁって思ったのでした。 というくらいの認識なんで、この本を読んでいても「兄って誰だ?幸四郎とどういう関係なんだ?」っていう体たらくでしたよ。
それにしても読んでて面白かったです。 相当なお坊ちゃまだったんだなぁ、っていうのもそうなんですけど、意外に古臭い文体だなぁっていうのが先にあって、プロフィールを改めて読み直したら、私の母と同い年なんですね。 いかにもその頃生まれの文体で、私は好き。