「鳩を売る少年」の題で書かれたシナリオを、当時新人だった大島渚が監督・脚本を手掛けて映画化。ある小都市の駅前。お金のために鳩を売る少年に出会った令嬢・京子は、同情から鳩を購入する。しかし、それは少年による巧みな罠だった。
大島渚の監督デビュー作。モノクロ作品。 原題は「鳩を売る少年」だったのを会社から改名を求められ、なんだかんだで「愛と希望の街」となってしまったそうですけれど、それにしたって何をどうしたってこの作品は「愛と希望の街」ではないように思います。 こう、アッパー的要素が微塵も無いんです。
社会問題というか政治問題、国家問題を提示するのは後の作品に通じるところで、大島渚はデビュー作からして既に大島渚である事がわかります。 鳩を売る少年は貧しい、川崎かどっかの貧民街のバラックで住んでおり、かたや鳩を買う少女(←少女に見えない)はブルジョアジー。 ここまでくると寓話の世界ですけれど、それを真剣に最後まで貫いているのはすごい。 なんだかんだでプロレタリアートとブルジョアジーは合間見れない、その1点をラストに帰結させ、ブルジョアジーはプロ市民から鳩をもう一度買い、猟銃で撃ち殺すのであります。
それにしても自分ちの2階のベランダとはいえ住宅街で猟銃をぶっ放すなんてすごい設定ではあります。 あぶなっかしくってしょーがない。 でも卑下してこれを鉄橋の下とか山奥とかにまで鳩を連れて行って・・・という風にしないのが映画らしさなのでありまして、ショッキングであり印象的なラストだと言えましょう。
なんなら大島渚作品の中で一番映画らしい作品なんじゃないか?と思ってみたりもするのでありました。