水で書かれた物語

『日本脱出』を最後に松竹映画を離れた吉田喜重監督が石坂洋次郎の原作を映画化し、その後日活系で公開された問題作。銀行員・純V谷はデパート経営者・泣G本の娘・ゆc梼qと婚約中。しかし、自分の母親・帥e香cj泣G本が愛人関係にあったため結婚に踏み切れず…。

(以下文字化け訂正)
『日本脱出』を最後に松竹映画を離れた吉田喜重監督が石坂洋次郎の原作を映画化し、その後日活系で公開された問題作。銀行員・松谷はデパート経営者・橋本の娘・ゆみ子と婚約中。しかし、自分の母親・静香と橋本が愛人関係にあったため結婚に踏み切れず…。

原作は残念ながら未読なのですけれども、基本的に吉田喜重監督作品は断続的ながらもできるだけ見ようと思っていまして。 ただ、母子相姦というタームはそんなに強くありません、この映画。 すごく強そうなイメージがありますけど。 つか、弱くていいですw

それにしても岡田茉莉子の母親役っていうのは怖い。 息子に向かって「あなたまだ若いのよ」なんて、自分の子供に向かって言う口調じゃないんです。 艶かしくて怖いんです。 これが原作の設定に沿っているのならすごい原作だと思うんですけど、どうにもこうにも岡田茉莉子の世界になっているような気がしてなりません。 いやはや。

岸田森が出演しているというのもこの映画を見たかった理由で、もう散々書いてますが、岸田森が出ると最悪は映画全体が岸田森になっちゃうんですけど、ことこの作品においては絶対から見れば岡田茉莉子と激突して負けちゃってます。 けれども出演シーンに限って言えば勝っちゃってるんです。 なにせ病弱の父親(つまり主人公の夫)ですもの。 吐血とかしちゃって、ベッドで寝てたりしちゃって、どうにも普通の役を見たことがない・・・

というキャラクターだけで圧勝しているこの映画ですが、そもそもが吉田喜重監督作品なので、その映像美の秀逸さにも目を奪われます。 小ネタ的には家の前にあるのが戦中では用水の水槽、戦後はそれが塵箱になっていて時代の違いを明確に映し出している・・・なんていうのはさておき(さておき、かい!)、照明の使い方、斬新なカメラワークなど、いかにもな吉田喜重ワールド。 ついつい見てしまいます。 凝視しちゃう素晴らしさなんですよね。

一際際立つのが海辺のシーン。 妾を形容した人形と、父の死を形容した棺桶をモチーフに、そして喪服の黒と白衣の白を対比させて台詞無しのイメージ的展開をするのですけれど、前半のゆみ子と静香のリフレイン、こちら側の静雄と波打ち際に打ち上げられた静雄、喪服だったのに白衣になってふわふわ近寄ってくる女性達。 その中で喪服のままの母親・・・。 異様な様式美がここにあるんです。

モノクロなので白と黒を明確に見せる事で印象を強いものとしているようなんですが、ラストシーンの(母親の)白いパラソルはなんとも物悲しく、伝えたい事を申し分なく伝えていたのではありました。