忍び外伝

伊賀の上忍・百地丹波によって一流の忍者に育てられた文吾は、己が何ゆえ忍びを目指すのか思い悩む。やがて北畠(織田)信雄率いる大軍が伊賀に迫るが――。伝奇あり、活劇ありの究極の忍者エンターテインメント!

今をときめく2010年代の綺羅星こと、乾緑郎大先生の1冊目。 意表をつくのが時代物・・・忍びものだっていう事であります。 私、時代物は好きなんですけど忍びものはどうしても荒唐無稽に見えちゃって敬遠気味なんではありました。 が、乾緑郎先生(w)の著作っていうんで喜んで買ったのであります。

そういえばどっかでなんちゃらチャンバラどうしたこうしたって評されてましたけど、ひどい話であります。 違うだろそれ、っていう。

時軸を複雑骨折させ、あっちいったりこっちいったりしている間に現実感が喪失しちゃう。 んでその喪失感に慣れたころ、逆に現実に戻す(落とす)その手法は本当に秀逸で、読んでいてとても気持ちいい。 文体もとてもセンスがあって、悩まずに読めるんですよね。 あ、悩むっていうのは話の筋じゃなくてね。 謎文体の作品って世の中に結構ありますよね、そっちの事ね。

20年だか30年だかの時間をほんの一瞬だかで覆うっていうのは乱暴ですばらしいよ!まったく!

「この作家のものなら間違いなく面白いと思ってもらえるようになりたい」と彼は述べたそうだ。 いい時代になったもんだ。 緑郎の著作が本になってこんな長野くんだりでも読めるようになったんだから。