1967年のモノクロ映画。 しかし吉田喜重監督作品なので、その映像美がすごい。 ちょっと怖いくらいの微妙なコントラストが非現実的であり、追憶風であったりで、ついつい見入ってしまいます。 もう吉田喜重監督作品って言えばいつもこう。 だから観ちゃうっていうのが大きいです。
これまでは案外に映像美ばっかり気が移っておったんですけど、この教科書的なメロドラマの展開の中で、岡田茉莉子の女優魂が爆発しているような気がして衝撃を受けました。 ちょっとした・・・いやちょっとしないんだけど・・・演技の中に、感情がぐるんぐるんに渦巻いているのが手に取るようにわかって、こんなの最近の女優さんと呼ばれている人達が1000人束になってもかなわないよなぁって。 そんな手合いを「タレントです」と切り捨てた岡田茉莉子がここにいた!って感じなんですよ。
ストーリーは本当にメロドラマで、なんという事はないんですけど、ふと思ったのが解説において「情欲に溺れる」ってあるところ。 この映画のタイトルは「情炎」なんですよね。 それはともかくも、燃え上がるような情欲をどうのこうのっていうのは、単純にそれなんではなくて、主人公の母親との「血」が絡んでいるところが肝なんですよね。 ですんで母親の死因がそのまま自分(主人公)にオーバーラップしていくのをあの映像美で見せられちゃう。 そのシーンがこの映画の最大の見所だと思います。
そう、ラストシーンがすごい、これ。
『女のみづうみ』の吉田喜重が監督と脚色を務め、岡田茉莉子を主演に迎えて描くドラマ。完全に冷え切っている織子と隆志夫婦、隆志の妹の悠子、織子が歌会で出会った彫刻家・能登の4人を通して、複雑な人間関係や情欲に溺れる人間の性を描く。