美代子阿佐ヶ谷気分

なんとなく、観たいなぁと思ったままで、その後DVD化されたとの話も聞かず、うっちゃっといてしまった感というか、単に忘れていたんですけれども、DVD化されていたんだなぁってんで、観たのではあります。

多分、1冊も読んでいない。 目にしたことはあるかも知れないですけど、読み通したことはないと思うし、これからも読まないんじゃないかって思う。 一番読んじゃいけないタイプのマンガなんじゃないかって。

だのに映画は観てしまうという。

ドライというには格好良いし、ガサガサしているとも言えず、70年代80年代の煙たっくさい、擦り切れた感じがよく出てて、一種異様なコラージュの感覚ともしましょうかセンスもまともではなく、映画の雰囲気を上手に盛り立てています。 ビールグラスにタバコを投げ入れる、泡がしゅっとなり刻まれたタバコの葉が舞うちょっとしたシーンがとてもよかったなぁ。

狂気の展開は静かに盛り上がり、空虚のままに物語が終了します。 原作者のインタビューも収録されておりますから、是非とも併せてご覧になればよろしいかと存じます。

1970年代、やるせない空気の漂う時代。
かつて井伏鱒二、太宰治らが文学コミュニティを形成していた東京・阿佐ヶ谷では、漫画界の巨匠・永島慎二が地元を舞台にした「若者たち」を発表。彼を慕う若者達が次第に街に集まり地元文化を題材にした作品を発表していた。若き安部愼一もその一人であった。
阿佐ヶ谷に居を構えた彼は、後のサブカルチャーにも大きな影響を与えた伝説の雑誌「月刊漫画ガロ」の次世代の作家として注目を集めたが、創作への不安、焦り、絶望が彼を蝕んでいく。精神を病み、一時筆を置いた時期はあるが、私生活に根ざした創作活動を続ける安部の作品は、日々の愛情、友情、挫折や疑念までも赤裸々に描き出す。
数ある短編のモデルとなっているのはいつも、唯一人の恋人であり後の妻である美代子だった。「激しい人生=作品群」の中で彼が一貫して語るのは、叙情的で、ある種ストイックなまでの純愛である。

愛のすべてを描きたかった・・・
70年代初頭。漫画家・安部愼一と恋人の美代子は東京・阿佐ヶ谷で同棲生活を送っていた。彼女をモデルとして月刊漫画ガロに発表した『美代子阿佐ヶ谷気分』は、彼らの一番美しい青春の季節を見事に切り取っただけでなく、当時の若者たちを取り巻く時代の空気感をも掬い取り、彼の代表作となる。しかし、自らの私生活の中に創作の糧を見つけようとする安部は次第に行き詰まり、焦りと絶望は次第に狂気をはらんでいく。その傍らで美代子は自らの性(さが)を意識し始める・・・「私たちだけ幸せだったら、それでいいじゃない」
――運命の二人の愛の変遷。