近松門左衛門の世話物浄瑠璃の映画化。男と女の情念と愛憎、二人を死に追いやった日本の精神風土を、前衛性と華麗な様式美が一体となった手法で描く。
「無頼漢」で、その対比が示されたのが同じ篠田正浩監督作品である心中天の網島(しんじゅうてんのあみじま)を原作とした「心中天網島」であります。 こっちは心中物なんで、結末は暗い。 あっちは1970年でこっちは1969年。 この時代だったんですね。
正直いって現代からすれば心中物というのがよくわからなくて、切羽詰まった一緒に死のう的な話の流れっていうのはすごく独特なものなんだなぁと感じる一 方、女性の方はだいたいがお女郎さんなんですよね。 だからこう、心中物が成立するのか、という。 よく知らないんですけど、心中なんていうのは心中物が 流行る前にも頻繁にあったのかっていうのがあるんですよね。 それと、義理っていうのも・・・この映画で言うところの義理っていうのが今ひとつ掴めなかっ たなぁ。
前段階として低予算だった(ちなみにATG作品)というのと結論的に低予算「だった」というものあるのでしょうけれども、その為か斬新な映像になっています。 普通に撮った普通の心中物だったら面白くなさそう。 そこをアイデアで突破しているんですよね。
ザラッとした質感のモノクロ映像、書割のセット、黒子・・・特に黒子の存在が薄ら恐ろしい。 本来の役割を映画でこなす黒子が段々に出演者を導くようになり、最後は心中する主人公達に引導を渡すまでになる。 特に(紙屋)治兵衛については土手っぱたにある鳥居(このビジュアルが不気味)で縊死しようとするのを強制しているような手伝いっぷりなんです。 モノクロですから、黒の土手と白の空、そこに黒の鳥居と治兵衛と黒子ですもの。 インパクトはすごいんですよ。
インパクトと言えば、まだ本人生きてるのに「紙屋治兵衛」っていう墓標を(観ている我々が)見せつけられれるところがピークでしたかねぇ。
あ、あと、岩下志麻さんきれい(通算3回め)でしたし、吉右衛門も若いよねぇ。