サンタ・サングレ(聖なる血)

「サンタ・サングレ」は、サーカス団長のオルゴとその妻でブランコの名手コンチャと、息子フェニックスの奇妙な物語である。
放蕩者のオルゴは酒びたりで、彼に色目を使う団員“刺青の女”を公然の愛人としてはばからない。一方コンチャは、両腕のない少女像を崇拝する異端の宗派“SANTA SANGRE”の狂信的な司祭でもある。ある日、曲芸中のコンチャがオルゴ達の不倫現場を偶然目にし、憤激した彼女は、オルゴの股間に硫酸を浴びせかけるが、苦痛に呻く夫が手にしたナイフにより両腕を切り落とされ、更にオルゴは、自ら喉を掻き切り自殺する。この惨状を目の当たりにしたフェニックスは、ショックのため精神病院に入院する。何年かが過ぎ、フェニックスは回復できぬまま病院で成人を迎えるが、その彼の前に両腕のないコンチャが突然姿を見せる。フェニックスは、彼女に引き寄せられるように病院を抜け出す。そして、彼女の両腕代わりとなり、父親のかつての愛人である刺青の女を手始めに、出合った女達を次々と殺害していく・・・。

比較的最近、と申しましても一昨年に出ましたアレハンドロ・ホドロフスキーのDVDボックスには、監督自ら「自分の子どもたち」と言ったエル・トポ(1969)とホーリーマウンテン(1973)、そしてファンド・アンド・リス(1967)が収録されていて、その後重要視され伝説化されたこのサンタ・サングレ(1989)は収録されず、DVD化はされていたんですけど恐ろしいプレミアがついており、おいそれと買えるようなもんじゃなかったんですけど、この度ありがたいことにニューマスターということで再発されました。

「初めて観客のために製作した」ということですが、神秘主義や哲学に傾倒した作品性はあいも変わらず、ホーリーマウンテンから16年(途中にTUSKがあるものの、記憶から失われてしまった)経って元画質も相当に向上して映像美を堪能できる反面、昔ビデオで観たエル・トポのような粗い画質が引き起こすいかがしさがなくて残念・・・だけど、これは意図したものじゃないから差し引くとして、やっぱりこれは先のDVDボックスに入れて欲しかったなぁと思うところなのではありました。

特典映像でも触れられているとおり、実際に起きた連続殺人事件を基にしており、基にしてるけどかなり違うけど基にしており(墓場になってない墓場とか)、監督自身の境遇(父親が元曲芸師でサーカスに縁が強い)も相まって、サーカスだの母親だのっていうとどうしても寺山修司を連想しちゃって、序盤はもうその映像美とで目がくらくらしちゃうところでありました。

この作品を観て一番書きたい部分がネタバレになっちゃうので書けないのからつらい。

母親と息子の関係が肝になってるんだけど、この母親っていうのがすごいですよね。 ブランコの名手(らしいです)なんだけど超異端宗派の司祭なんです。 んで、この宗派「サンタ・サングレ」のロゴマークが、崇拝対象になってる両腕の失われた少女の、その失われた両腕なんですけど、デザイン性が妙に高いんです。 これ、Tシャツにすれば売れるぜ?くらいの。

ネタバレになっちゃうから書けないんですけどね、正直言えば途中ダレちゃうところはあるものの、終盤がね、ラストシーンがね、すごくいいんですよ。 「自分自身の手」を取り戻すんですよ! でもね・・・

これは必見だと思うなぁ。 新作の「リアリティのダンス」も楽しみだなぁ。