悪魔のようなあいつ

1968年12月に発生した3億円強奪事件。犯人の可門良(沢田研二)は、孤児院の先輩だった元刑事・野々村(藤竜也)の経営する高級クラブ「日蝕」で歌手として働いているが実は脳腫瘍に冒されており、余命いくばくもない身体であった。時効まであと半年となった時、金目当てに良をつけ狙う男、良の不思議な魅力に惹かれる女、3億円事件解決に執念を燃やす刑事たちが現れ、彼の運命を狂わせていく…。
良と野々村の関係がホモセクシャルを思わせ、沢田の持つ退廃的な雰囲気がフルに生かされた作品。加えて久世光彦(プロデューサー兼演出)の挑戦的な演出が随所に見られ、大胆なヌードシーンや多量の血しぶきが飛ぶ暴力シーンの数々は鮮烈にして強烈。劇中、3億円を命がけで守る良が野々村に「この金は、俺の青春なんだ!」と叫ぶシーンが印象的。この作品は、もう若くはない男と女が、青春の夢を果たした青年に自分の夢の残像を重ね合わせた末、命を落としていく哀しい物語なのである。

やっとこさ観た。 1975年の沢田研二主演のドラマ。 3億円事件をモチーフにし犯人役に沢田研二を配するも主軸は事件そのものではなく、その後の時効までを描いたという異色のドラマ。

つか、3億円事件なんて今の若い人にはピンとこないだろう。 実際問題、二十歳そこそこの何人かに訊いてみたけど知らないという。 知らないし、興味もないし、そもそも知る機会がなかった、という。 そういったところでした。 だもんで、事件を知らない人がこれ観ても面白くないんじゃないだろうか。

同じく、古いドラマであります。 昨今のドラマとは違い、撮影技術的にもある意味での稚拙さが見受けられ、観るにあたっての注意力をそがれる一因になるかも知れないです。 特にこのドラマはスタジオ(セット)撮影が主なので、意図的にロケを行わずにスタジオ撮影にこだわったそうなので、最終回なんかは「おいおいおい?w」ってなっちゃうんであります。

と、引いちゃう話ばっかりしたけど、このへんの障害をクリアした上で観て欲しいのす。

私自身は当時の放送を観たのではないし、そもそもにその頃といえば今のうちの子と同じくらいの年齢・・・5歳とか6歳とか・・・なので、こういうのが好きなうちの両親がたとえ観てて、私もご相伴に預かったとしても、覚えているわけがない。 それと、当時の風俗的なこと・・・オトナ事情的なのね・・・もよくはわかんない。

でも、このドラマは随分とタブーに挑んでいるんではないだうか。 そもそも主人公が男娼であり、彼と孤児院にいたという、元刑事で現クラブオーナーで裏の顔役は男色であり、ヤクザ(伊東四朗)はオカマであり、そっち系だけでも随分なもんです。 セクシャルなベクトルであれば、やたらと濡れ場が出てくるのも興味深い。 当時的には深い時間帯(22時)だからこそできたのでありましょうか。 ずいぶんと刺激的ではあります。

沢田研二についてはもう、若いみんなはとーちゃんかーちゃんに訊いてみればいい。 当時のジュリーはすごい人気で、ファッションリーダー的な立場であり・・・セックスシンボルですか、昔風に言えば。 主題歌が「時の過ぎゆくままに」だと言えば「あーあの頃か!」てわかると思う。 志村けんと絡んでコミカルにやってた頃。

他にも豪華な出演陣で、先ずは藤竜也大先生が出てる。 クラブオーナーっていうのが藤竜也で、相変わらず不気味な笑い方をしてくれちゃい、しかも男色だというから強烈過ぎて失禁しちゃいそう。 渋い衆道さんていうことで、すごくいい藤竜也さんです。 そして荒木一郎! 荒木一郎をこういう配役にするっていうのは慧眼でありますなぁ。 元レーサーで、主人公も働いてたバイク修理業の社長。 不良ぶってるけどダメキャラっていう役回りをとてもよく演じています。

そして、デイブ平尾さん。 デイブ平尾と(篠ヒロコ)篠ひろ子が出ているっていうだけでこのドラマを観た私ではありましたが、やたらと調子のいいクラブの店長を演じています。 この調子の良さっぷりが尋常でなく、絶対に本人のキャラじゃないだろう分、楽しんで演じている風であります。 数日間「シャッチョ!」なるフレーズが耳から離れませんでした。

他にもほーんと沢山いろんな俳優さんが妙ちくりんな役で出てるんですが、殆どが最後には死んじゃうという。 もちろん主人公も死んじゃうんではありましょうが、それ以上に周りのみんながばんばん死ぬという、すごい展開なんですよ。 主人公の妹もついでに死んじゃう。 デイブ平尾もついでに死んじゃう。 ついでに死んじゃいすぎなんですから。

脚本はあの長谷川和彦で、ジュリーと長谷川和彦って事でそののちに「太陽を盗んだ男」につながっていくんですけど、死に対するベクトルなど、このドラマと太陽を盗んだ男には主人公に対するものに似通ってる部分が多く、決してプレ「太陽を盗んだ男」ってわけではないでしょうけど、意識して観てみるのも一興なんじゃないでしょうか。 詳しくは最終話の次に長谷川和彦の(ロング)インタビューが収録されていますんで、是非観てください。 すごく勉強になる。

すごくいいドラマだと思うんですよ。 1970年代の日本における、極北のドラマじゃないかと思うんですよね。 ぜひぜひ観て欲しいなぁ。