力道山

そりゃもう藤竜也目当てで観て、好々爺然たるも実はかなりおっかない「会長」を例の下卑た笑い声で飄々と演ずる藤竜也を十二分に堪能したのではありました。 時よりドスを利かせてみたり、挙句の果ては日本刀を抜いてみたり、おおなんという藤竜也だろう、と。

私自身は昭和プロレスに少しハマったクチですし、そうねぇ橋本が死んだり武藤が全日入りしたりって頃に離脱したもんでして、力道山にはあんまり興味がわいてこなかったもんです。 日本のプロレスを作った人なんでしょうけど、街頭テレビの人なんでしょうけど、私の好きなプロレスとは違うよ、と。

ですけど時代なんですねぇ、その橋本やら武藤やらが出演してんですよ。 こうなると当時のファンとしては嬉しいですし、橋本はこれが遺作になったそうで感慨深いものがございますなぁ。

それにしても2時間半は長かった。 後でWikipediaなんかで調べてあぁこの人粗暴だよねぇたいへんなもんだねぇなんて思った次第ですけど、もうなんていうか朝鮮のイメージを下げる粗暴っぷりがもうやでやであなた。 それと、日本語の片言感が強すぎて、ちょっとアレだったなぁ。

史実だったかどうだったかはあんまりどうでもよかったので、映画としてみれば、藤竜也を堪能できてよかった反面、それ以外は今ひとつの印象なのではありました。

 日本のプロレスの礎を作り、街頭テレビで人々を熱狂させた力道山。その生涯を、韓国の名優、ソル・ギョングが体現する。相撲部屋に入門するも、激し過ぎる性格から破門され、アメリカに渡ってプロレスを学んで帰国する力道山。シャープ兄弟とのタッグマッチなど、伝統の一戦を要所に挟みながら、妻の綾や、興行界を仕切る会長との関係が描かれていく。
30kgも体重を増やし、ほとんどのセリフを日本語でこなすソル・ギョングは、圧倒的な存在感。有名な空手チョップを始め、リング上の熱戦も、当時の力道山の姿に比べて違和感はない。日本人から受ける差別や、横暴な一面、そしてビジネスマンとしての才能など、ひとりの男の人間ドラマとして観ても、本作は見ごたえがある。ソン・ヘスン監督以下、韓国のスタッフが中心ながら、ほとんどの場面で日本ロケが行われたのも異例。1950~60年代の日本人が持ち、現在のわれわれが忘れかけた、純粋な興奮や上昇指向が、韓国からの目線で画面に焼きつけられた点でも、貴重な1作だ。