Barquinho (Maysa)

波乱万丈の人生を送ったことで知られる彼女にしては珍しく、つかの間の平穏時代に録音されたアルバム。それだけにその歌声にも穏やかさがあふれていて、素敵なボサ・ノヴァを堪能させてくれる。

魔性の女といわれた(笑)Maysa。 1961年リリースと言われたり1964年リリースと言われたりなこの作品は「つかの間の平穏時代に録音された」のだそうですけど、1曲めがあの「小舟」ですから驚いちゃう。 演奏はタンバ・トリオなんだそう。

内容はもう文句のつけようがないくらいによくて、オーケストレーションもゴージャスだし、Maysaのボーカルのドスの効き具合も素敵。 それとあいまっていいのがジャケット。

リオデジャネイロはポン・ヂ・アスーカルを背にして、ヨット(小舟)に佇む若者たちの写真。 こういうときに船頭は黒人だし、若者たちのうち絶対誰かはギターを持っているわけですが、まぁそれがいかにもブラジルって感じなんではありますが、この写真全体から漂ってくる不安感はなんなんだろうって。

ひとつ思うのが、当時・・・といいますかこれよりも相当あと・・・1980年くらいまで?の洋雑誌のグラビアが(これ毎回言ってるような気がするけどごめんなさい)、こういう色合いだったんですよね。 あと紙質もあったかと思いますけど、こういうね、日本っぽくない色合いと質が独特の「洋物感」なんですよ。 で、それがこう、明るくないんです。 基本曇った写真ばっかりな記憶しかないのですけど、たとえ晴れた写真だとしてもね、グラビアの質感的に曇って見えちゃうんですよ。

でもおかしいんですよね、これブラジルなんだもんね。

だもんでこれは(いくぶんは)曇った日に撮影されたんだと思うんです。 そして海もね、海の色も暗いんですよ。 なんかでっかいタコとかいそうなね、でっかいタコがサタンの化身でね、こう若者たちをがおー!って襲う的なね。 そういう不安感があるじゃないですか、あるだろ?あるんだよ!

・・・さておき、このジャケット写真はそんなこんなでぱっと見和気あいあいな雰囲気がありながらも、よくよく見ると不穏な空気があると私は感じて、それがMaysaの生涯に通じてたんだなぁって結論付けるのでありました。