「でもまぁ、いつまでも、うちの婆さんと一緒にいたいのよ」。こんな素敵にノロケられる人は小沢さん以外にいません。滋味深い文章にはますます磨きがかかり、テーマも老い、幼少期の想い出、東京、そして芸談と多岐にわたります。ああ人生って、年を重ねるってイイナア、と思わず抱きしめたくなるエッセイ集。
なんだかんだで小沢昭一の著作を読んでいるような気がするけど、解説に記されているような克明さはなく、今でも小沢昭一ははじめからおわりまでこんな小沢昭一以外のなにものでもない語り口調なんだと思っている私ではあります。
これはもしかしたら何度も書いているかもしれませんが、そもそもに私にとって小沢昭一はラジオの人で(お囃子は山本直純で)、バイト時代なんかはトラックの助手席に乗って17時になるってぇと若山弦蔵が「おつかれさま」なんて言い出して、家に帰る頃には小沢昭一が(お囃子は山本直純で)おっさんサラリーマンの悲哀を語るのでありました。
この本を読み始めてふと、初老ってなんだろうっていうんで調べてみましたら、昔は40歳代で初老だったんですね。 そりゃえらい昔の話で、今だったら60歳代なんだそうですけど、昔だったら初老とされていた年齢に自分がなるなんて、っていうか小沢昭一が死んじゃうなんて、そりゃあたしは思いもしませんでしたよ。
こういうのが「昭和の思い出」であり、若者が嫌がるもんなんだろうけど。