特殊慰安施設協会(RAA)――太平洋戦争直後、進駐軍兵士の性の処理のため作られた施設である。日本女性の貞操を守る、という理由で、ダンサーや事務員の名目を使い若い女性を募集した。華やかな銀座のクラブのマダムたちにも、この施設の出身者がいたのだ。伝説的なママ、津島映子を中心に、自らの知恵と肢体を武器に生き抜く女たちの物話。
インターネットの世の中、というか辞書要らずなWikipedia世代には、RAA?ちょいとウィキで調べてみるかってなもんで、こういった小説を読む前にあらかた背景がわかるというものですけれど、というか今やこういう小説そのものがKindleで読めちゃうもんだから、ほんとうに苦労知らずな話ではありますなぁ。
「雨やどり」は1975年の作品で、こちらは舞台が新宿ですが、1994年に刊行されたというこの「昭和悪女伝」は舞台が銀座(あるいは熱海)で、時代もかなり違いますのでなんともはやながら、銀座に「壺」という店があり、それで一編書かれており、しかもその銀座の「壺」の閉店と同じ頃に新宿に同名の店が開店したうんぬんとあり、仙田というバーテンを知る人にとってはニヤリとさせられるところで、著者のサービス精神が如実に現れているところです。
半村良の水商売モノは、いったいどんくらいあるのか知りもしないながらも、見つけると嬉しくて買ってしまうんですよね。
ただ、この昭和悪女伝は、楽しんで読む、というふうにはなりませんでした。 なんかね、圧倒されちゃってね。 登場人物はおそらく全部フィクションなんでしょうけど、熱海にこさえた宿泊施設の名前が「小町園」っていうのにはいささか驚かされたところです。