中学の入学式、いきなり喧嘩で相手を圧倒したキーちゃん。なぜか気に入られた茂は、埼玉出身の悪ガキ鈴木、魚屋の佐々木と共に四人で毎日遊びまわることになる。飲酒喫煙、喧嘩カツアゲから刃物を使った暴力沙汰まで、とにかく悪戯や悪ふざけを越えた遊びで悪名高い集団に。しかし中学も終わりに差し掛かった頃、キーちゃんは姿を消す。どうやらヤクザになることを決めたらしい。キーちゃんの代わりに番長と見られるようになった茂の立場は微妙に変化し、高校に入ってからも様々な火の粉が降りかかるようになる。ある日、揉め事の最中、茂にちょっかいを出し続けていた岡田の腹を佐々木が出刃包丁で刺してしまい――。チンピラから成り行きでヤクザの世界に入り込んでしまう少年たちの姿を描く、青春バイオレンス小説。
よほどでなければ今どきの小説を読まないのは、どうせつまらないだろうという先入観があるからにほかならない。 どんな内容だかわからないような新刊を博打を打つような気分で読むよりも、発刊からしばらくの時間を経て一定の評価を得た作品を読むほうがいいに決まっている。 どうせそっちの「新刊」にしたっていつかは「旧刊」になるのだろうし、評価が得られなければ闇に埋もれるし。 なにしろコストが合わないような気がして、新刊を買うのは。 とはいえ音楽に関してはこれにあらずなのが妙といえば妙ではありますけれども。
私は足立区の生まれで、もっと言えば梅島で生まれて島根で育つという(産まれたのはそれこそ大塩医院だから島根で生まれたといってもいいくらいだけど)ちょっとアレな話なんでありまして、二丁目から一丁目へ行くのは訳はないし、っていうか中学に行くにはそっち通るわけで、あーこれがビートたけしの実家かねって話なくらいでありました。
ということなんでいまや足立区はおろか東京にもいない私ではありますけんども、この年齢になると妙に故郷を懐かしく思うんです。 特に子供を授かってその子供が大きくなりますってぇと「この頃俺はどうしていたか」なんて考えるわけで、となると行動範囲が足立区の北でいえば六月町であり、南は川をこえて北千住なんであります。 西は西新井だけどなぜか東は日光街道をそんなにはこえないっていう不思議さはあったけど。
足立区のサイトに足立区大好きインタビューというページがあって、そこに著者のインタビューがあって興味深い話をしていたんです。
最近はますます「足立愛」が昂(こう)じちゃって、今年『足立区島根町』っていうタイトルの小説を出版する予定なのよ。小説だから名前は出せないけど、(以下略)
https://www.city.adachi.tokyo.jp/miryoku/interview/t-kitano.html
2019/1/1のページ公開なので、おそらくは本作のことなんだと思います。 内容は随分と違ってしまったけど(タイトルも)、足立区を舞台にしているのは同じ。 つっても足立区度は高くはなく、川口あたりに置き換えても全然いけちゃいそうなのが残念。 さきのインタビューで足立区度を随分に期待させちゃうんですからもう、いけずよね。 でもね、
「北千住で飲んでても昔はなあ、タクシーが千住新橋を渡ってくれなかったんだぞ」「なんで?」「新橋渡ると金払ってくれないやつがいるんだ」
https://www.city.adachi.tokyo.jp/miryoku/interview/t-kitano.html
こんな話、地元民にしかわかんないわけで、そっちに舵を切らなくてよかったのかもしれません。
ちなみに私はヤクザ話が大嫌いなんで、もう元も子もありませんけれども、著者と一回りも違う私にしても足立区というネタからすると楽しく読めました。 短編のほうは読んでいません。