Dori ではなく Dory なのはブラジル風なアルファベットの書き方なのでそうで、もちろん知りませんでしたし、検索の仕方がおかしかったのかなって今でも思っているくらいに意外な話ではあるんですけども、今やカリフォルニアの住人なんだそうなので、Dory 名義がこれ、1972 年リリースのおそらくはソロ1作めだけなのも興味深いところではあります。 Odeon からリリースされたとき三十路前だというので、十代で既にプロとして活動していたにしては随分と遅咲きのソロ活動だとは言えますけど、音楽家の家に育ったことに起因しているのかしていないのか、周辺のサポートを第一に考えていたのかいないのか、少なくともそんな三十路前のソロ1作めのジャケットには、すでに大物の風貌(Caymmi 家はみんなそうなのよね)が見て取れます。
Odeon から親会社の EMI に籍を移してリリースした、こちらは Dori 名義の 2 枚(1980 年と 1982 年)と、1作めを併せて 3 in 1 で売ってくれれば話は早いのに、とは以前書きましたところですが、それなりのリリースはあるものの入手が難しめだっていうのがいいんだか悪いんだか。 ながらく私としては幻の作品群だったわけですが、この度揃えて聴いてみるに、やはり1作めが一番いいように思います。
なにしろ 1 曲めが O Cantador(英語詩では Like a Lover)。 Festival da Record 1967 で、舞台に上る前に Elis Regina が Dori になんか申し訳無さそうに話しかけるのが印象的なこの動画、曲のタイトルと歌詞を知ってるとなんか涙が出ちゃいますですね。 ♪歌い手、私は歌い方しか知らない
一周して本人が歌うのを聴くのは本当に嬉しい。 どこかに「慈悲のある歌い手」って書いてありましたけど、基本的に女性ボーカルを好んで聴く私でも、この人の低くて味わい深いボーカルは大好きです。 やっぱり初期 3 枚を 3 in 1 にするべきだと思うんだよなぁ。