天使の恍惚

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若松孝二57本目の監督作品。首都総攻撃を目論む革命組織「四季協会」の秋軍団十月組リーダー十月は、米軍基地襲撃など武器奪取のためのゲリラ襲撃を展開する。しかし、冬軍団二月組に武器を強奪され、兵士たちはリンチにあう。焦燥感の中次第に孤立化し、個別闘争の中で散っていく兵士達・・・。前年にドキュメンタリー「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」を撮りベイルートから帰国した若松孝二率いる若松プロがATGと初提携して製作した問題作。

隣の市にどうみても流行らなそうなレンタルビデオ店ができて、そこに若松孝二監督作品の VHS がごっちゃりあった。 どうせすぐに潰れるであろうから借りられる間に借りまくって観まくってしまおうと、正月明けに制限いっぱいに借りられるだけ借りて観ては返し、また何本も借りて・・・というのを繰り返したのはそろそろ結婚するかしないかの頃で、わざわざ隣の市のレンタルビデオ屋まで車で行くのを妻はどう思ったか・・・つい最近になって訊いてみたところ「おぼえていない」とのつれない答えでありました。

どういうわけかその店に置いていなくてずっと観たかったのが天使の恍惚でありました。 正直言えばこの頃のこういう傾向の映画は、今の若者には退屈極まりないものでありましょうし、このころ産まれた当方としてはこの後数年してからの記憶しかなく、例えば映画のラストシーンで新宿の・・・歌舞伎町の信号のところを北に向くから三信会館(現在のビッグペックビル)から Moa 2 番街(っていうのを今知った)を南下して新宿通りを伊勢丹の方に歩いていく主人公を左から睨むのは・・・アルタではなく二幸なのですけれども、私は二幸を見たことがありません(二幸新宿本店は 1978 年 2 月末で閉店)。 っていうくらいなので、私の記憶の前の新宿はこうだったんだ・・・とか、東口の派出所はこの頃からあるんだぁ・・・とか、そういう懐かしみ状態で観ちゃう側面もあるんですよね。

字幕がないので台詞を追えず、50 年前の若者言葉なのでわけがわからず、成人映画なのでそういうシーンが無駄に多く、サパーみたいなところ(会議室、と言ってた)でなぜかスーツ着てワインを傾けるとか、過激な左翼なのに運転手付きのベンツに乗ってるリーダーとか、もはやギャグの世界に通じるところもあったりなかったりなんですけれども、爆弾テロが実際に起きたりで上映館がなくなってしまって制作元の ATG でしか上映できなかったというところで幻度が相当高い映画ではあるんですが、なにしろラスト 10 分はすごかった。

もう一度観るのであればどうしても字幕が欲しい。 台詞を追いたくてたまらない。